この歳になると、「知らない」ということに強くなるものだ。若い時には人から聞かれた時に「知らない」と言う言葉に勇気が必要だった。「知らんのん!」と、馬鹿にされたような気がしたからだ。でも本当はそんなに深い意味で言ったのでは無いこともこの歳になって分かった。安心で無い場に迷い込んでしまうと、この安全・安心の度合いが下がり、知らないという言葉を出せなくなる。イジメにも合うかもしれないからだ。

損害保険の代理店を作った時にこう思った。「田舎にいたら情報は偏る。東京目線で物事を考えようと」

そうは言っても東京にいないのだからどうしよう?と思って、そこから日経新聞を読むようになった。本当に恥ずかしい話で、ビジネスの世界では、皆さんがしてることなのに。とにかく無知だった。

いざ購読を始めると、いっぱい書いてある。その情報量は莫大だ。さすが日経新聞である。

でも困ったことなった。情報を得ようとすればするほど時間が掛かり、あっと言う間に1時間が経つ。未だ半分も目を通してない。仕事もある。電話も掛かって来る。訪問の予定もある。本当にどうしたら良いのだろう、と思った。段々読むのが苦痛のなって来た。いかん、いかん、と鼓舞するが、なんせ時間が無いのだ。

困っていると案外良いこともあるものだ。困ったという波長が自分から放出されると、やがて波長は高くなり、遠くに飛ばす。それを誰かがキャッチしてくれるものだ。これが、”ご縁”というエネルギーに変換されて、自分に返って来るものだ。日経新聞の「日経新聞の読み方講座」というセミナーを見つけた。本家本元が解説してくれるのだから、悩みが一気に解決する気がした。一泊二日で東京に行ってセミナーを受けた。田舎は大変である。5万円のセミナーに飛行機代とホテルが加算されるから、全部で12万円に膨れ上がる。田舎で生の情報を得ることには、なんせ現金がいる。

「記事は全部読まなくて良いだよ。自分の興味がある記事を二つ三つ見つけて読んでいくと、過去・現在・未来のストーリーになって物事の確信や予測がつくものです。だから興味がある記事を読み続けてください」

随分楽になった気がした。それから斜め読みをするようになって、気になる記事だけに目を通すようになった。このセミナーが、自分で見つけて参加した人生最初のセミナーだった。

何ごとにも最初がある。何も知らないことが普通である。知らないことを知りたいと思うことは、とても大事だ。知らないことには、人生のチャンスが隠されていると思う。