飛行機に乗ると寝るか落語を聞くか、本を読むかのどれかだ。面白くて2回も聴いた落語がある。忙しい社長や絶えず働き続ける人に聞いて欲しい。

「化け物使い」の物語をざっと伝えるとこうだ。

人使いがなんせ荒い隠居のお爺さんが主人公である。何事もちゃっちゃっとして、段取りよく物事を片付けないと気がおさまらない。空いた時間があるものなら、隙間を利用して仕事をぶち込む。何たって忙しい。

自分が忙しいならまだしも、それを人にやらせるからたまったもんじゃない。人使いが荒いから使用人は次々と暇をもらって辞めて行く。「今日はゆっくりしていいから」と言っておきながら、仕事を言いつける。「あの言葉は何だったんだ?」と首を傾げるくらい、思いついたことを次々と言う無骨な隠居爺さん。

その中で3年間も働いた奇跡の使用人がいたが、引っ越しをすることをお爺さんから聞かされて辞めることにした。何でもその引っ越し先の屋敷には、化け物がでる曰く付きの物件。使用人は大の化け物嫌い。まあ、誰も嫌いではあるが・・・。

そんなことはお構いなしにひとりで引っ越してきたお爺さんだが、化け物屋敷なんかに使用人が面接に来ることもなく困っている。

案の定夜になると、身体がゾクゾクっとしてきた。一つ目小僧の登場だ。普通なら怖がるもんだが、お爺さんはただもんではない。
よく出てきてくれたもんだと、一つ目小僧に身の回り世話をさせる。布団敷きだの食事の後片付けだの、時間外労働のオンパレードだ。「夜に出て来られると身体がゾクゾクするから、今度は昼間に出て来い」と言う始末。

一つ目小僧の次は大入道が登場する。でかい身体に目をつけられて、草むしりや重たいものを運ばせる。これまた100時間を超える時間外労働で、一銭も払わない。

次は女性ののっぺらぼうが怖がらせにくる。「女の化け物の方が家が華やかになる」と言って、これまた働かせる。化け物の扱いに慣れきったお爺さんは、次々と使用人のように働かせる。

遂に最後は狸が涙ぐんで登場する。
「お暇を頂きたいのですが」

お爺さんは狸に言う。
「何?お暇をくれだと!」

「こう忙しくては辛抱できません」と。
狸も辛ったのだろう。

人の世界も同じである。忙しくて人に辛く当たったな〜と思った時には、この落語を聴いて欲しい。