島根県大田市には、「掛戸松島」と名所があります。絶壁と奇妙な岩があり、波根湖の水を日本海に流すために開掘された場所でもあります。2000万年前の火山活動により樹木が土の中に埋没して珪化木となった、と聞いた覚えがありますが虚ろ覚えで定かでありません。

埋没といえば三瓶山の埋没林は絶景です。三瓶山が噴火した時に流れ出した溶岩が、古代の樹木が押し倒されずに立ったままで埋めらた場所です。発見されたきっかけは、土地の持ち主が田んぼ?畑?のどっちかに切り株が埋まっていて、作業に邪魔だと思っていたそうです。何かのきっかけに邪魔な切り株を取り除こうとしましたが、掘っても掘っても根が出て来ない。不思議なことだと市に相談して本格的な調査の末に、その土地の下に古代の大木が立ったままで埋められていたことが分かったそうです。※あくまでも地元の人が面白、おかしく私に教えていただいた話ですので真実は皆さんで調べてください。

発掘当時には現地説明会にも参加しました。ヘルメットを被って発掘中の埋没林を見た時には興奮しました。4000年前の大木がそのままの姿で見られるのは凄くないですか!木の中や皮には昆虫や虫もいたそうで、益々ロマンが広がります。今から23年前に地主の人が切り株が邪魔だと思わなかったら、正規の大発見は無かったはずですね。

そんな大田市は島根県の丁度真ん中でおへその位置です。営業で出掛けると日帰りで、そこそこの飛び込み営業で件数を回れるギリギリの場所です。ここを超えると、17時迄には会社に帰ることができません。飛び込み営業を必死でやっていた時には、私の中の大田市は営業デットゾーンと勝手に呼んでいて、ここを超えると直帰になる境界線でした。

松江から往復で約140km、えっちらおっちら車で行って、飛び込み営業しても何も良いことが無いとさすがに落ち込みます。車には営業で必要な資料やパンフレットや市ごとに用意したゼンリンの地図や電話帳、もしかの女神が訪れた時の契約書。あるいは契約内容を変えたいと相談されたら、出先でも駆けつけることができるように、変更の契約書やモバイルプリンター、シガレットの変換器などなど、車のトランクは商売道具で一杯です。準備万端で気合いが入った飛び込み営業で、話を聞いてもらえないのは本当に辛くなります。

昼になると飛び込みは一時中断します。大きな失敗をした経験があるからです。

「お客さんを見つけないと!」

そんな切羽詰まった状態では昼なんか関係無いと飛び込み営業をしていました。ある建設業の事務所に行くとソファーに誰かがいる様子がします。ラッキーと思って、ごめんください!を言いますが返事がありません。もっと大きな声で、ごめんください!を連呼します。ソファーで寝ていた様子の社長がスッと起きてきて、

「うるさいんじゃ!昼休憩で疲れて寝とるのに邪魔をするな。営業だったら13時に来い!昼は仕事をする時間じゃないわ。アホンダラ!」

凄い勢いで叱られました。切羽詰まって私の思考は既に破壊していましたから、昼からだったら会ってくれる、と思ったのでしょうか13時になったので、「ごめんください」をまた連呼したら、奥さんと社長がいて、さっきの話をぶり返されて再び叱られました。初めてそこで気付いたんですよね、昼休みには相手を仕事に巻き込んだら駄目だと言うことをです。朝のスタートは色々ですが、昼は駄目、17時以降も仕事の話をしたら駄目。限られた時間の中で如何に工夫をして効率を上げながらお客様と面談をすることができるのか、そのチャンスを作り出すための飛び込み営業の絶対条件は、時間のコントロールであることをその社長から教わりました。

そうは言っても現実は厳しいですから、思い描いたような成功はたまにしか訪れません。全然上手くいかないと、

「心が折れます

」本当にどうしようかと悩みます。多分そこで人生の分岐点が訪れます、辞めるか我慢して続けるかです。幸い私には自分から辞めると言う選択肢、分岐点は無かったので、我慢をしてやるしかありませんでした。でも我慢ではなくて、常に新しく発見したことへの実践です。お客さんにトークの練習をしてその反応と修正をしながら、次のお客さんへ実践します。駄目なら修正、そして実践、その繰り返しで自分の型を作っていきます。

それでも心が折れるのが営業です。大田市は自然豊かな場所で、海の青さと山の緑が美しい街です。営業デットゾーンで辛くなった時には、遠くを見るようにします。海や山は凄く大きいです。そして良い時も悪い時もいつも同じで接してくれます。本当に有り難い存在だったと思います。きっと都会で営業をしていたら分岐点が訪れていたかも分かりませんね。

何かのシンボルは自分に勇気を与えてくれます。あちこちに自分だけのシンボルを置いておくと、心が折れそうになっても頑張ることができます。

今日も一日、頑張っていきましょう!