高校生の同級生で格好イイ男がいました。背丈は小柄ながら、彼が歩くと異色の雰囲気と都会の香りを醸し出す、魅力満載の彼が羨ましいと思っていました。
髪はテクノカットで毛先はワックスで立たせています。化粧をしているんじゃないかと話題になるくらいに、眉毛と目元バッチリで口元は少し赤色。体育は苦手でバレーボールをやらせたら女の子と間違えるほどにナヨナヨに変身するあり様で、アメトークの”運動神経悪い芸人”に匹敵する力を持っています。
通学の時はいつもウォークマンを薄いカバンに入れて、オレンジのスポンジのついたヘッドホンをしながら、ひょこひょことやって来ます。小人の坂本龍一がヘッドホンして音楽を聴きながらやってくる、そんな雰囲気です。
「何を聞いてる?」と聞くと、「こんなの」と気軽にヘッドホンを渡して聞かせてくれます。「やっぱりな!」と期待を裏切らないその音楽はYMOのRYDEEN(ライディーン)、彼にピッタリの曲だと感じました。その時に教えてくれたのが
「ライディーンは雷電からきているの知ってた?格好イイよね」
「お前が格好イイわ」
と思わず返したことを覚えています。時々話す程度で卒業してから一度も会ったことはありませんが、遠い風の噂によると美容師になるために東京に上京後にアメリカに渡って、モデルのカットとメークをして、業界では結構有名だと聞きました。きっと高校生活なんて屁とも思っていないでしょうが、洗練された都会の雰囲気を醸し出す彼には、とても魅力を感じていました。
机の片隅に放ってあったウォークマンを見て今日の話題にしました。彼の持っていた初代のウォークマンよりずっと新しい型で1995年製。今見ればこれでもゴツいのに、いくら持ち運べると言っても初期型はかなり大きなカセットタイプ。毎日重たいものを持ち歩いて大変だっただろう、と思いますが拘りを貫く彼のプライドとスタイルの現れだったのでしょう。
代理店販売とは、メーカーから商品の供給を受けて、ある程度決まった金額に売り手の独自の魅力をプラスして売る商売です。時には何処で買っても誰から買っても値段は同じで、営業のやり方で売れたり売れなかったり。時にはネットの価格帯や量販店と勝負をすることもあり、試行錯誤の連続です。
先程の彼で例えるなら、
「時代の最先端のウォークマンを身に付けている彼が魅力的だった」
のではなくて、
「彼がウォークマンをしている姿が都会人に見えて魅力的だった」
この違いです。何を軸として魅力を醸し出しているのか、彼の何処を見て魅力を感じたのか、小柄で女の子ポイ所もある彼なのに、何処に魅力を感じたのか、営業の仕事にはとても大切です。
「 商品の良さ〈 人の魅力 」
商品の性能や強さで勝負する営業には波が出やすくなります。高性能で業界初なら売れますが、型落ちなのに値段は新型と変わらない、あるいは高い、と言う世界で戦うのが営業です。魅力は自分で作るもので、その魅力を持った人が高性能の商品を手にすると爆発的に売れますし、旧型でも新品のような新鮮さと使い勝手で欲しくなりように導いてくれます。
「スマートで格好良く異色の存在感を作る」彼から教わったスタイルをずっと続けて行きたいですね。
今日は週末、楽しんでいきましょう!