前回は、「見張りがいたのに、なんで氷山にぶつかったんだろう?」と言う素朴な疑問を想定してみました。他にも様々な想定はできると思います。見張り番が居眠りをしていたとか、思いつくことは沢山あると思います。

今日は、「氷山に当たれば船体に穴が空くの?」と言う素朴な質問を様々な想定で解いてみましょう。

先ずは氷山の大きさです。タイタニックの大きさを超える氷山と衝突したらひとたまりもありませんが、ネットで検索すると衝突した可能性がある氷山の写真も公開されています。想定を上回る大きな氷山が衝突し穴が空いて沈没した。それ程単純では無いみたいです。

船の製造過程で問題があったのでは?とも指摘されています。”沈まない船“と呼ばれたのは、船を16区画に仕切ることで、船体に穴が空いて海水が船内に入っても、その区画だけで浸水を食い止めることができる構造になっています。アメリカ空軍からの猛攻を受けながらも、右へ左へと海水を入れながら、必死で踏ん張った戦艦大和も、この防水区画を1147持っています。最新の注排水システムを使って傾いた船体を復元できる凄い技術は、不沈艦と呼ばれたくらいです。

当時の事故調査では、90mの亀裂が入り、5つの区画が浸水して沈んだと言われていましたが、数十年経ってからの調査によると、90mの亀裂は無く船体にいくつもの穴が空いていたと言います。

この穴とは船体を鉄の板で止めるために使用された、直径2.5cmのリベットと言われる止めピンみたいなものです。リベットは300万個使用されていて、それを船体に打ち込む作業は大変だったようです。それを補うために、取付は機械で行っていましたが、前方部分には設備上機械での取付が出来ずに、手作業で行っていたようです。機械が使える所はリベットは3個使い、前方の作業は時間の短縮でしょうか2個だったようです。それも打ち込みを良くするために、鋼鉄では無く錬鉄を使用していたため、強度も低かったようです。おまけにスラグと言う物質を混ぜて強度を高めようとしていたようですが、実際には強くなかったそうです。

氷山が前方の船体に当たり、鉄の板には物凄い負荷がかかったのでしょう。その衝撃で強度不足のリベットは耐えられずに外れてしまい、鉄製の側面板の隙間から海水が一気に流れ込み、2時間30分という短時間に船は沈んだという想定ができます。もし、船体の中央に氷山が当たっていたら沈まなかったのでは。沢山の命が救われた可能性があります。

まだまだ他にも沢山の想定があると思います。3回に渡った私見の想定も事実ではないかもしれませんし、事実かもしれません。大事なことは、大きな事故になればなる程、様々なリスクが絡み合い、ある一定の限界を超える何かの直接原因が発生した時には、手がつけることができない大きなリスクとなって、事故や災害に見舞われると言うことです。小さな事故ほど目につきやすく、大きな事故は潜伏期間があると言うことです。

リスクマネジメントは、未来を想定して将来が上手く行くように考えるものです。この「上手く行く」と言う言葉は様々な可能性を生み出す意味を持っています。事故を防ぐために使うような限定的な事象ではありません。あらゆる可能性を想定して、失敗をしない、失敗しても大ごとにならないための回避力でもあります。

・人間関係が上手く行くように
・お客様が気持ち良くモノを買ってもらうために
・営業マンがお客様と上手く商談できるように
・効率を上手く上げるために
・気付きを良くするために
・直感力を上げるために
・物事の順序を考えるために
・利益を上げるための行動をするために
・リスクへのアンテナを高くするために
・幸せな人生にするために
・健康を持続するために

などなど、経営や人生の本質を変えることができるのが、リスクマネジメントだと思っています。経営者やお客様から評価される方は、思考の感度が高く、視野が広い、様々なことに関心があり敏感、直ぐに場の変更や違いを察することができる人です。決して会話が上手なだけではありません。経営者やお客様が何をして欲しいのか。それをどうすれば早く応えることができるのかを瞬間で考える、これがリスクマネジメント能力だと思います。特に利益を下げる行動には敏感でなければいけません。

リスクマネジメントは思考や視点を鍛錬することで実現できます。是非、幸せな未来のために、想定する力をつけていきましょう。

きっとタイタニックの製造に携わった方は思っていたはずです。「いつか大きなことが起こってしまうかもしれない」と。

今日も一日、とにかく頑張っていきましょう!